新企画!食べ歩きに役立ちそうな食の知識を勉強してアウトプットしていきたいと思います。
普段、様々なジャンルのお店に行きお店の方に食材の知識や調理方法、魚の産地や漁の方法、様々聞いてきたが実際に勉強するとより詳しくこの本には書いてあり、知れば知るほど面白い!と思ったの事を共有したい。
特に注力を継いで行こうと考えているのが食材の知識。その中でも好きな鮨や焼鳥にまつわる点をインプットしアウトプットしていこうと考えている。第一弾は『マグロの最高峰』著者中村一歩さんが2019年12月10日に発行した作品である。
『マグロの最高峰』と聞いて、何を想像しますか?マグロ漁に関しての事なのか、マグロの美味しい食べ方なのか、それともマグロの産地別の魅力なのか。ひとえにマグロと言っても、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロと食用とされているのが五種類あり、この作品で話している『マグロ』は全て『クロマグロ』の事を認識しておいて欲しい。
簡単ではあるが、『マグロの最高峰』に書かれている事をまとめ私なりに感じた事を書いていこうと思う。
マグロの歴史
日本人がマグロを食べ始めたのは縄文時代と言われ、貝塚からマグロの骨が発見されている。当時鮪(マグロ)は鮪(シビ)と呼ばれていた。鮨の歴史と共に『熟鮓』から『箱鮨』、箱の代わりに笹の葉で巻いた『毛抜き鮨』へ、そしていよいよ職人が握る握り鮨へと進化していった。
煮る、蒸す、締めるといった江戸前の仕事をマグロも生では無く醤油に漬け込んで『づけ』として握られていた。ただ、マグロは当時高級魚として扱われていない。鮨は屋台として誕生し、庶民のファーストフード的な食だった。シビは「死日」を連想させると嫌われ、いつしか『真黒(まっくろ)』と呼ぶようになり、『まぐろ』となった。
昭和30年代までマグロは下魚として扱われ、東京の高級な鮨屋では敬遠されていた。今では高値で取引されている大トロや中トロの部位は『アブ』と読んで見向きもしなかった。『アブ』とは『虻蜂取らず』『脂汗』『泡銭(あぶくぜに)』と言われ商売上良くなく、不潔の位置付けにあり、当時は全て捨てられていた。結局『アブ』は大工や左官など労働者が暮らす下町の一膳飯屋でネギと一緒に鍋の具とされ、これが『ねぎま鍋』である。
『アブ』を『トロ』と呼び始めたのは吉野鮨の大将が普段は赤身握ってマグロとして出していたが、売り切れてしまったので『アブ』を醤油、酒、みりんに漬けて握ったらお客に好評だった。そのお客が、食べたら口の中でトロけたから『トロ』と呼べばいいじゃないか!ひょんな事からゴミ扱いされていた部位が最上級な商品へと確立されていたマグロの歴史があった。
マグロの産地・漁獲方法
マグロの産地で最も知られているのは青森県大間市。2001年正月の初セリで202キロのマグロが2,020万円と過去最高値を付けて一躍話題になった。しかも前年にNHKの朝ドラ『私の青空』の舞台も大間町だった事も幸運に重なり、大間マグロのブランドが確立された。
勿論全て大間のマグロがいいという訳ではなく、噴火湾・戸井(北海道)、福浦・三厩(青森)、塩釜(宮城)、佐渡(新潟)、紀伊半島(和歌山)、銚子(千葉)、境港(鳥取)、壱岐(長崎)、萩(山口)などがある。
(本書には書いてなかったが、時より沖縄でも水揚げされる事があり、高級鮨屋で見た事がある。)
(日本海と太平洋で獲れるマグロの違いは何なのか?と、当初疑問私は感じた)
フィリピン南西沖で生まれたマグロは黒潮にのって日本近海にやってくる。黒潮は沖縄本島の西およそ100キロに位置する久米島の沖で分岐し、一つは太平洋ルート、もう一つは日本海ルートに分かれて北上し、やがて津軽海峡周辺で合流する。そのためマグロの水揚げ漁港は日本各地に点在し、季節によって変わる。
テレビで見た事ある方も多いと思うが、マグロと漁師が格闘しているシーンがある。マグロ漁といえば一本釣りのイメージが強いが、各漁港でマグロの水揚げの仕方が違うのだ。
漁獲方法は大まかに4つあり、一本釣り・延縄・定置・巻網。
一本釣は大間(青森)・壱岐(長崎)
延縄は津軽海峡・遠洋漁業
定置は佐渡(新潟)・東日本
巻網は境港(鳥取)・塩釜(宮城)
『一本釣り』は大間伝統のマグロの釣り方。大正時代あたりから大間に広がった。テグス(釣り糸)に釣り針、そして餌という極めて単純な釣り方。大間では七割が一本釣り。壱岐は一本釣りのみと地域によって違う。一本釣りの方が美味しいというイメージが強いが、何せ海のダイヤと呼ばれ時速80キロで回遊しているので命がけの戦いになる。無理矢理釣ってしまうとマグロが暴れてヤケが出来てしまい商品価値が下がってしまう。泳がせながら少しずつ、少しずつ上げていき槍で仕留める。
『延縄漁』は幹縄(みきなわ)と呼ばれる一本のロープに等間隔で、餌と針のついた枝縄つけ、海に流し、時間をおいて引き上げる漁法。幹縄の総延長は大間では100キロ程度だが、遠洋漁業にもなると1000キロにも及ぶ。枝針の数は2000本にもなるので、一度縄を投入すれば複数のマグロが獲れる。
『定置網漁』は海流に沿って回遊するマグロの性格を利用した漁法。沿岸近くのマグロの通り道にあらかじめ網を張り、回遊してきたマグロが網にかかるのを待つ。
『巻き網漁』はマグロの群れを巨大な網で巻いて一網打尽にする。
どの漁が一番良いとは無いが、最後の巻き網漁が問題になっている。一網打尽にするという事はマグロのみならず、マグロ以外の魚も獲れればマグロの稚魚(ヨコワ)とってしまう。ん?境港で稚魚が獲れるのか??と疑問に思うかもしれないが、境港から萩辺りでマグロの産卵を見たという漁師さんがいる。マグロがいる事に気が付き、下を見てみると白い小さな稚魚が沢山居たとの事。絶滅危惧種になるつつあるマグロの巻き網漁は物議も醸し出している。それゆえ、境港であがるマグロが市場で取引される時期(7月ごろ)は価格がグンっと下がる。マグロを町興しとしてやっている境港だが、マグロ問題解決には一刻も早く漁方を変えるべき!
マグロの価格
2019年の初セリで3億円超えと史上最高額が飛び出した!買い手はお馴染みの方である。正月にグンっと価格が跳ね上がるのは景気付けの意味合いもあり通常キロ単価平均8,000円のマグロが、この時ばかりはキロ120万円になった。マグロの価格は誰が決めているのか?と、考えもしなかった事を本書では書いてある。
各漁港で獲れたマグロは豊洲市場に送られる。そこで五つの卸会社(東一・大都・東水・マルナカ・第一)がマグロを扱っており荷受とも呼ばれている。荷主である漁港から仕入れ競りを開催し値付ける重要な役割。一方飲食店(料理人)やスーパー、デパートに注文に応じて競りに参加し、目当ての品物を調達する役割を担うのが「仲卸」で、実際に入札に関わる仲卸の担当者を仲買人という。
良いマグロが沢山あれば値段は下がり、少なければ値段が上がる。単純な話だが、需要と供給で成り立っているのだ。いささか、昨今の正月の価格上昇は驚くばかりだが、漁師は一攫千金を狙って年末頑張っている。
究極のマグロ
鮨屋バブルと言われてから数年経ち、現在都内に鮨屋が何店舗あるかご存知でしょうか?都内だけでも4560軒あると言われ、一番多い場所は中央区の447軒、次いで港区391軒、新宿区232軒。入れ替わり立ち代り激しいが、バブルなので出店すれば儲かると思い、銀行もここぞとばかりお金を貸している状況。
果たしてどこで究極のマグロが食べられるのか?と、私も気になり著書がオススメしているお店を紹介。
さわ田
鮨とかみ
鮨處 はる駒
新ばし しみず
鮨よしたけ
入船寿司
大和寿司
鮨 太一
すし宗達
すぎた
10店舗を紹介しているが勿論主観もあり、その時に最高の仕入れを出来たお店もあれば、そうで無いお店もあるだろう。私が行ったことあるお店は鮨 とかみのみ。噂に聞くお店もあるが、最初に書いた通り都内だけで4560店舗もあるので回りきれない。が、私が究極のマグロに出会ったことのあるお店を紹介してみたいと思う。
らんまる
鮨桂太
高柿の鮨
たちのみいしまる
鮨いしやま
『らんまる』は昨年、赤身がの酸味がとても綺麗で食べた時のテクスチャーが素晴らしかった。
『鮨桂太』は、マグロの柔らかさに加え噛んだ後に香りが楽しめた。
『高柿の鮨』は何と言ってもシャリのパンチがマグロの旨味を引き立ててくれた。
『たちのみいしまる』は再訪問した際、シャリの塩味が強くなり温度も高くしマグロとの相性が絶妙だった。
『鮨いしやま』は砂糖を使ったシャリだが、甘みと酸味のバランスが良い。
まだカウンター鮨50軒ほどしか食べ歩いていないが、印象を耐えてくれたお店はある。産地や季節によって味は勿論脂のノリや香り、柔らかさは違う。マグロはマグロだけ食べても美味しいと思えない。シャリがあってこそ(鮨にしてこそ)マグロの力が発揮され、特にシャリに塩味を効かせた方がマグロの香りが立つという事が分かった。マグロを食べた時の鼻から抜ける香り(フレーバー)は何が違うのか?本書で酸味の効いた香りについて詳しく書いていないが、マグロを獲った後の処理はとても大事だと書いてある。特に一本釣りで獲れたマグロは暴れるのでマグロ自体にストレスが増え、さらに熱がこもってしまう。上がったばかりのマグロのお腹を触ると熱いらしい(40度くらい)。冷たい海水に居るはずのマグロが40度にもなれば身にヤケが出来てしまい、台無し。獲れたら直ぐ血抜きをしお腹に氷を入れて冷やす、これが最も重要な作業と言われている。香りの強いマグロも、この行程があってこそだがあの食べた時の香りの正体は分かっていない。
マグロ一つで『マグロの最高峰』の本を書き上げた中原一歩さん、読めばマグロ愛が伝わり本当に好きなんだなぁと実感させてくれた。マグロのみならず、是非平目や小肌の最高峰という本も書いて欲しいくらいだ(笑)。食好きは勿論、マグロを扱っている全ての事業者にもオススメしたい勉強になる本だった。
今回ご紹介させて頂いた本はこちら↓
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